安食雄二シェフ・興野燈シェフ インタビュー

クオカスタジオの人気企画、2人のシェフによるコラボレッスン!
10月13日に行われた最新回は「SWEETS garden YUJI AJIKI」の安食雄二シェフと、「パティスリー・アカシエ」の興野燈シェフにお越しいただきました。
以前から交流があるというお2人は、レッスン中も絶妙な掛け合いで息ぴったり!
「これどうなってるの?」とお互いに質問されあったり、私たちだけではお聞きできないような細かい手法のお話など、プロのシェフ同士ならではの会話にも花が咲きました。
インタビューでは、お菓子の素材のこと、そして自分の店をつくるということについて、お2人それぞれの信念をお伺いすることができました。

安食シェフ、興野シェフ インタビュー

■安食雄二シェフ(左):1967年東京都生まれ。フランス料理店「ら・利す帆ん」、「横浜ロイヤルパークホテル」などを経て、98年からは「モンサンクレール」のスーシェフを務める。2001年「デフェール」のシェフパティシエに就任し、2010年「SWEETS garden YUJI AJIKI」をオープン。

■興野燈シェフ(右):1972年埼玉県生まれ。「京王プラザホテル」、「パティスリー・レカン」を経て渡仏。2003年アルパジョン・コンクール・ショコラ部門優勝。2007年「パティスリー・アカシエ」を、2010年には同じ通り沿いに「アカシエ・サロン・ド・テ」をオープン。

今回のルセット(レシピ)は、 安食シェフが抹茶とピスタチオの生地にいちごをのせた彩り鮮やかな焼き菓子「ケイクバンブー」(写真左)。 興野シェフはチョコレート、ライチ、フランボワーズを組み合わせた華やかな「サントノレ・リチ・ルージュ」(写真右)。
どちらも味わいの想像をかきたてるような、斬新な組み合わせでした。

ケイクバンブー サントノレ・リチ・ルージュ

cuoca
早速ですが、素材についてのお話を。 安食シェフのケイク、ピスタチオと抹茶という組み合わせは珍しいですよね。

安食シェフ
ピスタチオといちごだけでもいいんですが、食べた瞬間にふわっ!と爽やかに香るのがいいなと思って。 意外とこの組み合わせ、いいでしょう。

cuoca
ピスタチオをホールからフードプロセッサーでペーストにする、というルセットでしたね。

安食シェフ
ナッツはね、当然だけどホールの状態が一番おいしいんですよ。粉になれば当然酸化も進むし、アーモンドプードルとかピスタチオペーストとか、加工されているとその分高価だし。
フードプロセッサーありきのレシピなんですが、これはその通り作ってみてほしい。ホールのナッツから作るケーキは、風味が全然違います!

安食シェフレッスン風景 安食シェフと興野シェフのレッスン

cuoca
抹茶はcuocaでも取り扱っている「萌葱」を使われていましたね。

安食シェフ
これ、お店でも同じものを使っていますよ。生菓子にも焼き菓子にも。香り、色、どちらもいいです。

cuoca
プロの現場でも使われているものと同じもの、と思うと嬉しくなります!
上にのせたいちごにも選ばれた理由が?

安食シェフ
センガセンガナという種類のいちごなんですが、酸味がきいているのが特徴です。
あとは大きさがポイント。
いちごって、外皮と中身で性質が違うでしょ。大きさが変わるとその分量の割合が変わるから、味も変わるんです。
これは小粒で、爽やさも香りも食感も、バランスがちょうどいいですね。

cuoca
アンビバージュ(生地に染みこませるシロップや液体のこと)に冷凍フルーツの解凍した戻し汁を使うというのも衝撃でした! 今までペーパーに吸わせて捨てることがほとんどで。これはすぐに試したいテクニックですね。

安食シェフ
あれももともといちごの水分ですからね。離水したものに砂糖を加えて煮詰めて、フルーツを戻せばコンポートにもなります。 缶詰のシロップも捨てずに使いますよ。白桃とかルレクチェとかおいしいです。 アルコールや砂糖を加えて、ケーキに染み込ませたりね。

cuoca
興野シェフはフルーツピューレを使われていましたが、どんなこだわりが?

興野シェフ
いろいろなピューレを集めて、ブラインドテストをやったんです。 それで選んだのがたまたま、ほとんどフルティエール社のものでした。
そのときは単純においしかったから、だったんだけど、いま製造工程を見たり、生産者と話をしてみて、改めていいなと思っています。

cuoca
フルティエール社の姿勢に共感しているシェフは多いようですね。

興野シェフ
素材の作り手が「こだわっている」って、当たり前のようで実はそうじゃないんです。
ひとつの木や株から獲れる量を増やすことや、生産者の利益を第一に考える人もいる。
でも、フルティエールは利益よりもクオリティを優先するという姿勢があります。
それが実際味にも表れているしね。 そういう精神が好きです。

cuoca
自分が作ったものがどんな風に使われているか、よく知らない生産者さんがいるということも聞きます。

興野シェフ
このあいだカカオ農園を見に行って実感したんですが、カカオからつくるチョコレートに関してその差は歴然ですね。
素材からできあがるものを食べたことがない人もたくさんいる。それだと熱が入らないのも当然なんです。
生産者も一緒に最終工程をイメージすることがとても大切です。

興野シェフレッスン風景興野シェフレッスン風景2

興野シェフ
生産者と僕らパティシエって、作ったものを使う、食べることをイメージするという意味では一緒なんですよ。
素材は使い手のために、それを加工する人は食べ手のために。
やっていることにはひとつひとつ理由があって、それを実現するために生産性を上げる。
もちろんもっとクールに、ビジネスとしてやるのも一つの方法だけど、熱くこだわっている人もいる。
僕はそういう熱のこもったものを使いたいし、そういうことに共感してくれる人に食べてもらいたいと考えています。
そういうことを追求した結果、今使っている素材に行き着きました。

cuoca
こだわりやポリシーをそれぞれに持たれているお2人ですが、 お互いのことをどう思われているか、ずばりお聞きしてもよろしいですか?

興野シェフ
僕がパティシエを目指したとき、とにかくたくさんの本を読みました。
で、安食さんはどの本にも載っているような人だった。
だから直に話したり、こうやって一緒に仕事できることはすごく嬉しく思っています。

興野シェフインタビュー風景

cuoca
当時から安食シェフは興野シェフ世代の方からの憧れの対象だったんですね。

興野シェフ
強く憧れていました。そして実際にお会いして、想像していたよりさらに魅力的な人でした。
安食さんは「俺はこうだ!」ということがすごくはっきりしていて、それって作り手には必要不可欠なものなんですよね。

cuoca
すごくわかります。お店にもケーキにも、唯一無二のシェフのカラーを感じます!

興野シェフ
お客さんに寄せていくのではなくって、安食さんに魅せられていくというか。お店の価値ってそこですよね。 だいたいみんな、やっていくうちに不安が出てきて、横見たり振り返ったりするんですけど。 安食さんは自分の信念と世界観を持ってまっすぐ堂々と押し進めていける。 同業でも惹きつけられるんですよ。 自分の数年後の道標というか、そんな方が前を歩かれていると勇気をもらえます。 立ち止まりそうになったら僕は北山田の安食さんのお店に行きます。行くたびにお店が変化しているんですよ。

安食シェフ
自分がたまたま歩んできた道や見てきたことから、素直に出てくるものを表現しているだけです。 フランスのエスプリを表現する、とか、本場のフランス菓子はこうだ!というお菓子作りもあるけど、まず自分はどうなんだ、ということ。

cuoca
興野シェフの第一印象はいかがでしたか?

安食シェフ
とにかくギラギラしてたね!でも、「できる」顔してた。いい表情してるなーと思ったよ。
お菓子に対する情熱とかね。俺は南米のカカオ農園までは行かないもん。(笑)
ここまでくると年上も年下も関係ないから、その情熱を尊敬しているし、刺激ももらっています。
あとは前から友達だったような気にさせてくれる人柄も。
お菓子って人柄が出るから、興野くんのお菓子は魅力的だよ。

安食シェフインタビュー風景

興野シェフ
ギラギラですか。でもギラギラしているときって自信がないんですよね。
だからフランスで修行してきたっていう経歴が欲しかったり。
でもその鎧には賞味期限があって、いつか通用しなくなって不安になる。
だからこそこの人でないと!っていう独自の世界観が必要なんです。

安食シェフ
興野くんはデータを蓄積していくタイプだよね。
好奇心旺盛で、いろんないいものをどんどん吸収して、自分のものにしようとしている。

興野シェフ
そうやって自分だけの世界を作っていくのが一番充実しているし、お客さんも楽しんでくれると思っています。他にないものだから。
正統派のフランス菓子じゃなくてもいいんです。
ニューヨークに行ったときもすごく刺激を受けたし、パリだけじゃないよなって。僕日本人ですし!

安食シェフ
フランスに長くいたらその分その影響を受けていたと思うけど、今は今だから。
僕の作るものにもサーフィンや吉田美和さんが好きって要素出てると思うしね!
データという形ではあんまり貯めてない。

興野シェフ
お菓子のことだけ考えて、本読んで厨房ばっかりにいるのもよくないですよね。
お菓子ってみんなが集まったり、楽しい時に食べたいものだから、眉間にしわ寄せて理詰めで作ったものはおいしくならないですよ。
食べてもらう相手は人間だから、楽しませる遊び心が作り手にも必要。
もちろん技術や知識の積み重ねは大切だけど、ひらめきがあってそれを形にできて、はじめて生きると思います。

安食シェフ
そういえばあんまり他のお菓子屋さんを見に行ったりもしないんだよね。 有名なお店でも行ったことないところたくさんある。

cuoca
そうなんですか!それは意外です。 偵察というか…他のお店の様子は気にならないですか?

興野シェフ
見にいく必要なくなっちゃうんですよ。自分の世界ができあがったら。影響を受ける必要もないんです。
でもそこまでいかないと「自分の店を持つ」ってことの意味がないというか、来てくれるお客さんと向き合う責任上、自分で自分の世界を作り続けなくちゃいけない。
それが一番難しいんですけどね。
あぁでも安食さんのところ行ったら影響受けちゃいそうになるんだよな。
それもうまく混ぜ込んで、ちゃんと自分のものにしていかないと!

クオカスタジオでの安食シェフ、興野シェフインタビュー

違ったアプローチでそれぞれの道を追求されている、タイプも異なるお2人のシェフ。
インタビュー中はどちらからも「自分」というキーワードが何度も聞かれました。
「自分の道とは何か?」 これはお店を作ることに限らず、誰の人生にとっても重要な問いなのではないでしょうか。
そしてお2人とも、その問いにまっすぐ、楽しんで向き合ってらっしゃる姿が印象的でした!

クオカスタジオでは、様々なレッスンを開催しています。
お菓子作りに興味のある方や、作ったことはあるけど自信のない方など、どんなレベルの方でも参加できる多彩なレッスンをご用意。
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http://studio.cuoca.com/